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マイクロフィルムで風景撮影(1) カメラを準備する

世の中デジタル化が進みました。

映画はデジタルデータから直接映写され、上映フィルムは使われなくななりつつあります。医療現場のレントゲンはデジタルに置き換わっています、今使われているフィルム撮影装置もどんどん置き換わり、診察室のシャウカステンは消えていくでしょう。書籍の印刷はデジタルデータから直接印刷版を製作するCTPに移行して、写植切り貼りの版下フィルムはおろかイメージセッターすら不要になりました。監視カメラはデジタル写真で撮影され、かつてのように赤外線フィルムで撮る事はありません。銀行は全て電子決済で行われ、マイクロフィルムに証書の写しを記録する事など決してありません。国会図書館も古い文献の多くをデジタル写真で残し始めています、マイクロフィルムが使われる事は少なくなっています。

そう、産業界から感材は消えていっているのです。今後特殊な用途を除けば全てデジタルに置き換わるでしょう。だってデジタルデータの方が検索が楽で置き場所も取らず便利なのですから。

ならばその消え行く感材に光を!いや露光を!という訳で、その感材を使えるうちに使って遊ぼう!という話になりますよね。(いえ、普通はなりません)





栄えある遊びの第一歩として選んだのは「マイクロフィルム」。そう、図書館で古い新聞の縮刷版を閲覧しようとすると「マイクロフィルム版ですね」と言われて、廊下に置いてあるテレビみたいな機械(リーダー)に案内されてフィルムをコロコロ送りながらスクリーンに映し出される新聞を読むハメになる、あのちょっと酸っぱい匂いがする巻物。え、知らないって?それすらもう見かけない風景ですよねぇ..。

マイクロフィルムは16mmが使われる事が多いですが35mmもあります。かつて富士フイルムが「ミニコピー」というシステム用に出していた「MINICOPY HR II」はアセテートベース有孔ですがマイクロフィルムの一つです。本来のマイクロフィルムはPETベース無孔の長尺で100ft巻などで販売されています。無孔ゆえに一般的なカメラでは扱えません。平床式と呼ばれる大きなマイクロ写真用カメラで使います。


私が普段から「マイクロフィルム、マイクロフィルム」と頭の中いっぱいに考えていたせいでしょうか、ある日うってつけのマイクロ写真用カメラを見つけてしまったのです。今回はちょっと珍しいそのカメラを紹介します。

平河工業社のHIRAKAWA 35 (HK-35)というカメラです。同じものが小西六からKONIMICRO HK-35、KONI-OMEGA ブランドで Micro film camera HK-35、LeicaからDocuflex 35として販売されたようです。

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このカメラ、驚くことに今でも新品で手に入るようですが、もちろんこちらはジャンク品。電源を入れても微動たりしませんでした。外装の汚れを落とし、分解して固着したグリスを洗浄し、組み立て直してようやく動作するようになりました。おかげで内部構造が把握できて一石二鳥。電源こそ必要ですが、いわゆる電子制御カメラではなくメカニカル電気駆動カメラとでもいう構造です。

カメラ本体だけではなく、台板、カメラ取り付け用の支柱、ランプがセットになっていて大きなアタッシュケースに入っています。持ち運びも出来るマイクロ写真用カメラなんですね。電源はAC 100V。当然ですが、コンセントがない場所では使えません。

2.jpg

レンズは独自の54mm径スクリューマウントのMICRO TAMRON 70mm 1:5.6。いわゆるマクロタイプのレンズです。

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観音扉のフィルム室。左が格納側で右が給装側、。給装側は暗室で使うフィルムローダのような残量アームが付いていて、給装側のみ扉を閉めれば単独で遮光できる構造になっています。有孔フィルムへの配慮だったり、撮影済みフィルムの中途取り出しをしやすくしているのでしょう。良く考えられています。

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ファインダーの隣はシャッター速度ダイアル。ACモータで動いているので50Hz(東日本)と60Hz(西日本)で速度が異なります。ダイヤルには50Hz使用時の速度が書いてあります。1/4~1秒の2段分、1/2段刻みです。
4.2.1
1/41/2.81/21/1.41
60Hzの時は1.2倍速くなります。(ほぼ-1/3段に相当します)

ミラーシャッターというPentax Auto 110なんかと一緒の構造です。ミラーが上がると露光。ミラーが降りると完全遮光です。シャッターが低速だからこその設計と言えます。

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レンズマウント側から見たピントグラスの様子。一眼レフ構造になっており、ファインダーでピントの確認が出来ます。ピントグラスには様々なフォーマットの指標が入っており、ファインダーを取り外して投影用のライトユニットに取り替えると台板でピント合わせする使い方も出来る(むしろこの使い方が普通)ようになっています。

6.jpg

裏面。右上は残量計。フィルムローダと一緒で目安程度にしかなりません。本格使用するなら別売りのカウンター付のコントロールボックスを使えという仕様。中央のダイヤルはフィルムの送り量です。カメラがマルチフォーマットに対応しているので22.5~55mmを2.5mm単位で設定できます。標準フレーム(32x45mm)の場合は47.5mmに設定します。

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フィルム面直前にアパーチャープレートを差し込むことでハーフフレーム(32x22.5mm)や有孔ライカ判(24x36mm)など様々なフォーマットに対応しています。

8.jpg

ミラーを上げレンズマウント側から見た図。バキュームによってフィルムの平面を維持します。シャッターボタンを押すとまずフィルムが送られ、ついでバキュームが掛かります。圧板は黒ガラスで出来ていて、溝が彫ってあります。有孔フィルムが使えるように考慮されています。フルフレームは面積が大きくてガイド端が少なく、撮影ではレンズが下向きになるため重力の影響を受けます。その上ミラーシャッターなのでミラーアップで浮き上がるのを阻止しなければならず、解像を確保する観点から言って必須機能でしょう。

さすがLeitzに納入されただけあって、アルミダイキャストのしっかりした造りです。雰囲気としては映画用カメラに似ています。ごつくていかにも産業用といった印象です。
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