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APSカートリッジのデータディスクについて(3)

APSカートリッジはデータディスクによって "フィルム感度" と "フィルム長" と "フィルム種別" をカメラに伝える機能がある事を説明してきました。データディスクはカメラの側にフォトインタラプタ用い、光の反射の有無で読み取られています。

しかしAPSカメラの中には、廉価に販売する目的でフォトインタラプタによる検知を省いてコストダウンさせている機種が存在します。今回はそのようなカメラがどのような方法でカートリッジからこれらの情報を得ているのかを考えてみます。


カートリッジには "高感度/低感度分類ノッチ" と呼ばれるフィルム感度の検出孔があります。

A.jpg

左は ISO 100 の、右は ISO 200 のカートリッジです。
資料によれば ISO 160 まではノッチがなく、ISO 200 以上にノッチを付けているようです。
丁度 110フィルムのそれに似ています。簡易的なフィルム感度検出という具合なのでしょう。カメラはこのノッチの有無で ISO 100 と ISO 400 のような決め打ちで感度設定するようです。

では "フィルム長","フィルム種別" を知る術はあるのでしょうか?
実はこれはありません。

フィルムは撮影コマ1つにつきパーフォレーションが左右に2つ存在します。カメラはこの2つのパーフォレーションを赤外フォトインタラプタによる光学的検知、あるいは機械的検知によって給装位置を決めています。

B.jpg

写真は最終コマの状態ですが、このように最終コマの反対側に終了を示すパーフォレーションが存在します。
カメラがこれを検出する事で次のコマが撮影不可であるのが判る事になります。

つまり撮影残数を表示するカメラは製作できませんが、撮影枚数を表示するだけなら問題ないという事になります。またそのような廉価なカメラが "フィルムの種別" を認識して露出制御をすることも求められないでしょう。


ところで、一般的なカメラはカートリッジの使用状態をどのように把握しているのでしょうか。

カートリッジには "使用状態マーク" (Visual Exposure Indicators = VEI) と呼ばれる指標が付いています。

C.jpg

カメラの多く (Nikon Proneaを除く殆どの機種) はカートリッジをこの指標を手前にして装填するように設計されています。これは使用者がカートリッジの使用状態を意識して使えるようにと意図されたものです。

しかしこれはあくまで人間が判別できるようにした指標です。カメラはこの指標を見ているわけではなく、カートリッジ中央のスプール軸の停止位置を装填後に検出しています。

カメラはカートリッジが装填されるとカメラ側のスプール駆動軸を最低1回転させてカートリッジのスプールと連結させます。チャッキングノッチが噛み合うとデータディスクが回転し始めるので、データディスクのバーコードの動きからそれを検出しスプールの停止していた位置を把握します。

次の図は指標1~4時のデータディスクの位置です。

D.jpg E.jpg F.jpg G.jpg

赤で示した部分からスプールのチャッキングノッチの位置とデータディスクの相関がわかります。
緑で示した部分はフォトインタラプタが検出している位置です。機種によって若干位置が異なりますが概ねこの近傍です。


さて前述の廉価な機種の話に戻しましょう。

フォトインタラプタを省いているためにスプールの停止していた位置 (=カートリッジの使用状態) を把握できません。どうすれば良いでしょう。

それらの機種は当然のごとく "磁気IX機能" も省かれています。そして "MRC機能" は磁気IXが前提の機能ですのでそれにも対応していません。しかしそのカメラにも "指標2 (撮影途中)" は勿論、"指標3 (撮影済)" や "指標4 (現像済)" のカートリッジが装填される可能性があります。そのままだと撮影済みコマに再び露光してしまいます。
これらの "指標1 (未撮影)" 以外のカートリッジを何らかの方法で拒絶する必要が出てきます。

先程の図で青で示した部分に注目してみてください。"指標1" の時この部分はデータディスクのバーコード(幅の広い部分)に掛かっていますが、その他の場合はバーコードに掛かっていません。
実際にこれを利用して機械的に "指標1" のカートリッジを選別する方法が取られています。

説明のためカートリッジとカメラ機構の青で示した部分を含む対角線の断面図を考えてみます。

H.jpg

例えば Olympus NEWPIC AF200 という機種では次のように実装されています。

I.jpg

カートリッジ室奥から金具が伸びています。この金具は充分な硬さがあって左の丸部分が支点になっており、カートリッジを押し込むと形を保ったまま奥へ入ります。またこの金具はバネでカートリッジを排出する機能も兼ねています。

J.jpg

"指標1" 以外のカートリッジを入れると金具の先端がカートリッジ底面に触ってエッジの立ち上がりに引っ掛かり、それ以上カートリッジを押し込めない状態になります。

K.jpg

"指標1" のカートリッジを入れると金具の先端がデータディスクの上を滑りエッジを乗り越え、カートリッジがさらに押し込めるようになります。

L.jpg

こうして "指標1" のカートリッジだけが格納できる仕組みです。

規格ではこの機構を "Double Exposure Privention" (= DEP) と呼んでおり、おおむね青で示した部分が使われているようです。
構造はカメラによって様々のようで、FUJIFILM nexia Q1 ではこれとは少し異なる構造が用いられています。


M.jpg

データディスクを機械検出するように出来ているなんて面白いですね。
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